軸編集部

表 ひろ

考える歯が生えてくるつくしんぼ

淋しさを干せば羅より軽し

星月夜いつか痛みのシャンデリア

雪吊りの旋律耳を漂わす

西ア 久男

母ありてこそ兜太あり山は春

屈折の雲八月を忘れない

鵙高音鬱の蒼天鉤裂きに

冬銀河蒼き野生が蘇る

秋尾 敏

傷つけてきた万象に種を撒く

暗緑街道無音の翼などいらぬ

悪の種あり晩秋を曲がる川

冬の川記憶の川に流れこむ


赤羽根めぐみ

しゃぼん玉待ってくれない人に吹く

植物の勢いで吸うソーダ水

鍵盤の最北端を星流る

空腹は小鳥のかたち冬はじめ


木之下みゆき

笑う山々円空は木でありぬ

蟇腹は八分でさみしいか

神渡し信長ちょっと呼んでこい

耳たぶに残る金箔寒い弥陀


中村 武男
<編集長>

呼吸している朧夜の馬頭琴

まぼろしの兵隊橋やさみだるる

樅の木へ霧洗礼を受けた過去

裸木になってこれからだと思う