軸 編集部


中村 武男 編集長

羽撃きが残像となる芽木地帯
山上湖からTシャツが帆のように
長考の後の眼がゆく紅葉山
凍る滝軍手から爪生えてくる

木之下みゆき

三畳に人は何置く春の月
ハンモックに重過ぎまいか夜のバッハ
流星をこの母なれば抱き止める
さよならを二度も言わせて細雪

西﨑 久男

かげろうの直球しかもど真ん中
炎天の水を畏るる水の里
秋蝶の過去を閉じゆく息づかい
山川草木送電線に冬疼く

赤羽根めぐみ

私をメトロノームに花の頃
干草に刺さりて星の妹に
熟睡の猫の酸っぱさ秋の雨
うさぎ抱かれて足首を交差する

山口  明

春愁を断つ水切りとハーモニカ
生きる意味問えば溽暑の獣道
なだらかな磁場晩秋のジャムセッション
捨てきれぬ夢分身の水っ洟

川上 典子

風光る握りしものを放つとき
ペディキュアの赤が素足になりたがる
成熟を問いかけられている晩秋
有形か無形か枯葉散る気配

三浦  侃

囀りや回診までは窓を開け
卓袱台の大きな薬缶麦の秋
ぽんと割れ桔梗の口は京なまり
小春日やベートーベンと握り飯

田村 隆雄 事務局長

たった一人の卒業歌海を見ている
猛暑居すわる動くものみな標的
スマホから顔あげてみよ終戦忌
同じ惑星にいて銃声とクリスマス