河合凱夫  「麦」入会のころ


昭和31年5月15日
  「麦」の吟行会が、野田市の水公園で行われた。地元の俳人として麦の人たちを歓待した凱夫は、午後の句会で四席に入選。これが「麦」とのつながりとなった。

          沼の潅漑遅々とつばくら宙を切る    凱夫

昭和37年5月号
   「麦」雑詠欄「黒土帯」初登場の凱夫は、5句を選句され、6席に置かれた。

          シャボン玉とならぬ滴が靴濡らす    河合凱夫
          春霞荷籠の底に鶏かがむ 
          初蝶や洗濯鋏襟に咲かせ
          火の粉吹く煙突雪が来そうで来ず
          書留へ母音たしかにまた耕す

     6月号  隙間だらけの雨戸花菜が月夜のよう

     7月号  土間に筍不動産屋で百姓で

  9・10月号  養護教諭の薬臭ほのと虹濃くなる

  11月号3席  酷暑の音か竹筒振つて出す硬貨
          樹の奥の毛虫焼きつつ墓と話す
          灼くる肌の一部分にて痒がる耳
          奔流の迅さかわらず蛇呑んで
          或る夜凉灰皿蒼き水を湛え

昭和39年より同人になったと思われる。

   2月号踏生集  飢餓
          胃カメラを嚥む刻々と固形の冬      河合凱夫
          寒い闇に眩暈う胃カメラじわじわ抜かれ
          バリウムを嚥んで真冬の胃が忿る
          霜日に透く乾酪(チーズ)の色のわが胃液  
          飢餓襲う霜の擾乱脳天に